ボランティアへの招待

 

 我々の活動地は、違法な山砂採取が行われたため、森が皆伐され大穴が空けられた2ヘクタールの土地です。現状復帰命令が出ていましたが業者は長い間放置したままでした。そこへ産廃最終処分場にするという案がパブリックヒアリングにかかりました。穴を産廃で埋め土を被せれば一石二鳥の解決案ということだったのでしょうが、周辺住民の反対運動により計画が動かなくなり国税庁の差し押さえになっていた土地は競売にかけられました。産廃業者と競争の末、地元の板倉・大椎土地改良区が買い取ることができました。買い取った目的は、この土地周辺で農業に従事している改良区の人達にとっては産廃処分場になることを止め元の水源涵養林に戻すためであり、周辺住民にとってはその結果として美しい里山で緑がキープされることでした。

 

 

 大きな問題は二つあり、第一に表土が全て削り取られて苗木を植えても全く育たないのではないかといわれた事、第二は山林の所有者も自分の山の面倒を見られていないのに誰がどうメンテナンスするという事でした。緊急避難として産廃処分場となるのを止めただけでは情けない、地域エゴなどと言われないためにも何とか元の森にというのがこの地区の住民の悲願でした。

 

 

上述のように非常に難しい状況ですが、この土地に鳥や風が運んだ実生の苗木が自生しているのを見た時に我々は苗木を植えてみる決意をしました。20075月に寄付のスギ苗350本を植えることから始めましたが、養分のない劣悪な状態のせいで多くの苗が枯れ、殆どの苗は真赤になってしがみつくように生きていました。それでも、チップ堆肥の寄付をいただくなど多くの支援に勇気づけられ、翌年3月にも152人の参加をいただき植樹祭を催し、毎年少しずつの植林を続けることができました。これも土地オーナーである改良区からの参加者と周辺住民のボランティアの力を合わせることができているからです。農業のプロである改良区からはトラクター、チェーン・ソー、刈払機など機械を使っての参加や、土地の一部を使っての野菜栽培にはノウハウを教えてもらい参加者を引き付けるため芋ほり、トマト、シイタケなど収穫の喜びを共有しています。

 

 

 

その成果はと問われれば、20148月現在で2169本の苗木が植えられ、場所によっては間伐が必要な状況にまでなってきました。別添資料のように今現在のGOOGLEの航空写真と2004年の航空写真とではその差は歴然としています。

 

 

 

 

 

この間の活動としてご紹介したいものには「1000の苗プロジェクト」があります。参加者に地元の公園や裏山でドングリと落ち葉を拾ってもらいました。ドングリは苗ポットに播いて参加してくれた子供さんに持ち帰ってもらい苗として育てる里親になってくださいという企画でした。潜在自然植生である地元の樹木のドングリから1000の苗を育てて植えましょうという企画です。一方落ち葉は堆肥場に敷き詰め落ち葉のプールにして遊び、できた堆肥で不足する養分を補おうという試みでした。翌年の5月にはたくさんの苗木を持って多くの親子がかけつけてくれましたし、落ち葉堆肥の中からはたくさんのカブトムシの幼虫がみつかり子供たちに喜んでもらえました。

 

 

 

もう一つユニークなのは国連の提唱するグリーンウエイブに毎年参加していることです。グリーンウエイブとは生物多様性の日(522日)に世界中で現地時間の10時に植林や水遣りを行うことで祝おうという運動です。時差によって世界中の人による活動が地球を一周する緑のウエイブに例えられているものです。また国連のHPにこのページがあり参加団体はツリーを登録し地球上にウエイブが起こる様子をバーチャルですが目の当たりにすることができるようになっています。ツリーごとに写真や報告もアップされるようになっています。毎年のグリーンウエイブ活動で参加者に呼びかけているのは、この活動は千葉の片田舎の活動だけれど、世界中で行われているウエイブの中の一環であり、地球全体でサステイナブルな社会を作ろうという活動の一端を担っているという誇りを持ってやりましょうという事です。

 

 

 

そんな活動をやっていて発見したのは何もないこの場所が子供たちにとって最高の遊び場だということです。広いだけですが危険なものがなく、少しずつ豊かさを取戻し始めた自然が素晴らしい場を提供しています。子供達が自分で遊びを作り出すのを見ていると子供は遊びの天才だと思いますし、お仕着せの遊び道具のないこの場所の方が楽しげに見えます。そんな点もアピールし子育て世代の親御さんという比較的若い世代からの継続的参加者も増えています。まさに子供と苗木を一緒に育てる場とも言えます。

 

 

 

現状は苗木しかない森だとはいえ、違法山砂採取の跡地という荒れ果てた状態からは漸く抜け出すことができました。しかしながら、活動日が雨天にあたる等の理由で1月活動がなければクズなどの雑草が生い茂り、2か月なければジャングルになってしまうような自然の力の前に、これからも山あり谷ありです。10年たった時に立派な森となり、水源涵養林となり、市民の憩いの場となって、持続可能社会の1実験場となることを目指して活動して行きたい。