ソフトテニスは穴場のスポーツ!?

 

平成2年卒 中野 知樹

 

勤務先で昨年8月から2人目の部下が出来た。38歳にして2人目というところに、本人の将来性と勤務先企業の成長性が疑われるところではあるが、その2人目の部下というのが秀逸、つい最近、昨年の4月までバレーボールのVリーグで活躍していたアスリートである。

株主に説明出来ないとやらで、Vリーグ下位に低迷する企業支援のバレーボール部をいきなりに廃部、部員達はバレーボールからの引退、社業専念、もしくは他チームへの移籍を余儀なくされたため、年齢29歳、将来を見越してバレーボール選手からの引退を決意、この度営業要員として我が事業部に配属になったのだ。

インターハイ優勝、インカレ優勝、2002年釜山のアジア大会で全日本入りして銅メダル獲得、などと輝かしい経歴の彼であるが、その彼と会話をするに及び、スポーツ全般に対していてマニアックな関心を持つ私は、日本におけるバレーボールの世界について根掘り葉掘り聞いていくことになるわけとなる。結論として言えるのは、その世界は紛れもなくプロフェッショナルな世界である、ということだ。

社会人チームとはいっても、社業、仕事には殆ど従事することなく、1日の半分は練習に当てられる、年に数回の合宿ではまったく出社せず、代表チームにでも選出されれば1ヶ月単位の合宿となる。女子の場合は更に過酷な世界のようである。彼の説によるとVリーガーで仕事をまともにやっているものは皆無 となる。

世界的に見てもさほどのレベルとはいえないバレーボールにしてもVリーグチームを維持するためには実質的なプロ集団が20名以上は必要、そこまでしなければ日本のトップリーグの選手としてありつづけることは出来ないのである。

そのわりには他のプロスポーツに比べて見入り(収入)が少ないというのが全般的不満のようだが、スポーツに打ち込むことが出来る、極めることが出来る環境がきちんと存在するという意味では、そう悪くないのでは、というのが私の率直な気持ちである。

 

振り返って我がソフトテニスの世界、例えば社会人選手でバレーボール並みにスポーツに打ち込むことが出来ている選手が日本に何人いるであろうか?かなりきちんと仕事をしつつ、仕事が終わってからの練習時間を数時間確保出来るという恵まれた社会人チームが恐らく5,6チーム、東京地区では、女子の ナガセケンコーとヨネックスがそれにあたるが、総計でも10名ぐらい。後の社会人チームは完全に仕事がメインの集団、仕事を犠牲にして練習をする環境にはまったくない。

仕事をせずに(プロフェッショナルな立場)でソフトテニスを行っている人間は存在しない、というのが私の結論である。環境に恵まれている選手でも、週に3,4回練習をして重要な試合の前だけ必死に調整する、というのが現実のソフトテニスのトップ選手なのである、つまりはその程度の極めで、トップランクに立つことが出来るということなのである。

他のスポーツと比較すると非常に由々しく、悲しむべき状態であるが、ソフトテニスという世界の内部にいる人間からすれば、これはある意味幸運とも言えないだろうか。

 

社会人選手との付き合いと自分の経験を振り返ると、例えば全国レベルの大会であっても、おそらく出場選手の大半は心の底では「練習不足」という意識をもっている。全日本選手権は、その唯一無二のステイタスの高さから、それ向けに調整してくる選手が数多いこともあって、ミスも少なくハイレベルの試合が展開されるが、それ以外の大会は、例えばソフトテニスを知らない人が見た場合、ラリーがミスで終わる確立の高さに驚くのではないかと思う。持論で言うと、ミスの数は練習量に反比例する、ことから考えると、全日本選手権以外の試合では、十分な練習が出来ないのである。

例外的にレベルが上がるのが、国民選手権大会(国体)、これは、各都道府県代表としてしっかりと練習時間と遠征費用を与えられることが多いため、ハイレベルな試合が多いと聞く(私自信出場したことがないため)。最近ではアジアオリンピックで辛うじて開催種目となっているが、それはごく一握り 男女それぞれ6,7人の選手だけが選ばれているだけで、全体のレベルアップということからは大きな意味をなしていないような気がする。

仲間の現役選手に質問しても、自分がもっとも練習していた時期は、半数以上が高校時代、残りの半分が大学時代、中学時代、という答えもある。スポーツ全般から見て、ソフトテニスは、最も技術的、体力的に成熟してくるであろう20代始めから後半の時期において、社会的な制約により(主として経済的事情)からスポーツに注力することが出来ないスポーツなのである。そしてこれは大きな穴場でもある。

 

穴場といったのは、2つの意味がある。一つは、そのように極めることが社会的環境で難しいスポーツであるから、1度環境が整えば、自らがのし上がることが出来る可能性が高いということだ。可能性が高いというのは、他のスポーツに比べて、という意味だが、その点は確信をもって言える、

もう1つは、これも相対的なことであるが、そのように社会的な地位の高くないスポーツには、産まれ持ったアスリートとしての資質が高い人間は、参入してくることが少ないということだ。

よく、アメリカのスポーツ選手にインタビューして「あなたが成功することが出来た理由は何ですか?」という初歩的な質問になると決まって出てくるのが「親が与えてくれた才能、と そして努力」という答えがある。彼らは、天賦の才能なしではプロフェッショナルなアスリートには決してなれなかったことを重々承知しているのだ。翻ってソフトテニス、果たして、中学校時代、クラスで最もスポーツが得意な人間が選択していたスポーツだっただろうか・・・。多くの場合 その答えはノーである。要するに、極めるための努力をするにしても、天才的な才能を持った人間と決して適うことのない無駄な競争をすることは可能性として少ないということになる。

このような、逆説的に見て幸運なスポーツと運命を共にすることになった我々は、それを踏まえて行動する必要があるのではないでしょうか。

 

昨年度、我がソフトテニス部は、春、秋連続優勝、昇格という素晴らしい成果を得ました。部員一同のたゆまぬ努力、それを温かくも厳しく実際に応援、指導してきた 関先輩を始めとしたOBの方々の努力の賜物だと思います。

少なからず、大学ソフトテニスの外の世界でのソフトテニスに身を投じてきた人間として切に願うのは、この快挙に満足することなく、さらに上の世界を目指して努力して欲しいということです。そしてどうせ目指すなら、トップレベルを目指して欲しいのです。

なぜなら、先ほどから力説しているように、ソフトテニスは穴場なスポーツであるため、練習時間、練習場所という環境が整っている一橋大学にとっては十分トップクラスまで目指す余地があるからです。また、現役学生の素質という面から見ても、現在のトップクラスの選手からみて、それほど引けをとるとは思えない、磨けば光る選手達ばかりだからです。

具体的にすべきことは、大学ソフトテニス内での相対的実力を測ることのできるレベルの大会に積極的に出場することです。関東の選手権、東日本学生選手権、そしてインカレ、それらの大会に出場して敗北を知ることにより、その敗北の度合いにより、自分の足りない点、そして自分の可能性を知っていくと思います。レギュラーでない人間は、レギュラー陣が負けることを目の当たりにすることで、自らが、目標としている人間、いつかは負かしてやろうという人間がそれ程偉大な存在ではないことを知ることにもなります。

20世紀が産んだ最高のフットボール選手にして指導者ともいわれるヨハン・クライフの座右の銘に、「若者には挫折を与えろ」というものがあります。指導者として世界の名門チームアヤックス、FCバルセロナを率いるにあたって、世界中から集められるフットボールの天才少年を、主として 少し上の年代チームに参加させることで、時には自らとボールを蹴りあうことで、大きな挫折感を味合わせてきたとのことです。自分が最高と思ってきた若き天才達に、上の年代チームの厳しさを体験させることで上には上があることを教え、それを乗り越えることが出来そうな見所のある選手には、実際に本人がボールを蹴りあい完璧なポールコントロール、ボール捌きを見せ付けて、その鼻をへし折ってしまったとのことである。もちろんそのように挫折を味わわせることで更なる高みを目指させてきたことは言うまでもありませんが。

ここで、一橋大学ソフトテニス部におけるクライフが誰か、ということはさておき、やはり挫折するぐらいの体験を常に求めていって欲しいという雰囲気を作り、OBとしてそのための協力をしていくことは大切なことではないかと考えています。今はある意味でチャンス、現役諸君が普通にインカレ上位進出を目標にするようになってくれれば、と思います。

さて、喜ばしい現役学生の成果と共に、華々しい 国立球朋クラブの成果をお知らせすることが出来ればよかったのですが、昨年は、やや停滞気味の結果となりました。

9部からの連続昇格で2部まで駆け上がったAチーム、春のリーグでは、東大赤門、慶応三田クラブ、八王子市役所、という 東京地区の名門チームとの対戦に感激しているうちに2勝1敗、で予選リーグ第2位で、遂に昇格がストップ。秋リーグは、エース杉浦をアメリカ留学で、若手のエース取違を法事で、それぞれ欠くこととなり、非常に苦しい陣容で臨みました。結果としては、案の定、固定して望んだ 中野・伊藤組も一敗地にまみえ、ばらして望んだペアも勝ちきれず、3連敗、3部降格の憂き目となりました。

Bチームは、10部での参戦、参加チームが多く昇格には激戦のトーナメントを勝ち抜く必要があり、むしろAチームよりも条件は厳しいぐらい。その中で、福田浩之君をリーダーに積極的な試合を行い、秋のリーグでは昇格までもう一歩のところまでいったが、無念の10部残留となっています。来年度は更に戦力を充実させて望みたいところです。

ダブルスでの戦績では、数多くローカル大会に参加、上位入賞の成績は上げているようですが、紙面の都合上詳細はここでは遠慮させていただきます。一昨年 全日本社会人ベスト32という一橋史上最高の成績を遂げた深沢氏は、今年も神戸大OB花田氏とのペアで果敢にチャレンジ、全日本社会人選手権では韓国代表ペアをファイナルまで追い詰めるも惜敗、東京選手権でもベスト4入りしたペアからマッチポイントを何度も奪うも逆転負けのすえベスト32と、それなりに実力を発揮、東京都での評価も高まり今期は真の実力を示す年と言えそうです。中野・伊藤のオヤジペアは、中野の子育て疲れからか粘り負けする試合ばかり、東京選手権で若手ペアから絵に描いたような逆転負けを喫しベスト32で終わって以来、二人の間に会話がまったくなく、ベア解散が噂されているようです(笑)。

女子チームは、津田塾OG+一橋OGで構成されています。春は予選リーグ2位で残留でしたが、秋リーグでは見事予選7部リーグ2位、6部への再昇格を果たしています。また、女子部のエースである、福田・細谷ペアは、東京女子ランキング8位 の実績もあり、10月に福岡で開催された全日本選手権(皇后杯)、に東京都代表として出場しております(福田亜紀子 さんは 福田浩之氏夫人です)

来年度の、目標は まずは部員の更なる勧誘、新卒業生のみなさん、テニスを続けていく場としてお気軽に参加ください。人数が多ければ3チーム目となるCチームを結成してもいいのではと思います。もちろん2部、1部への昇格は狙います、東大赤門は1部にいますし、上智OBチームは我々との入れ替えで2部に昇格しています。

個人的には、家族との時間を重視せざるを得ない微妙な年頃なのですが、その合間を縫って OBテニスの活発化、ひいては一橋ソフトテニスの更なる発展に寄与していければと思います。

 

以上